社員からのアイデアや意見をどう取り扱うか
社員の意見を経営に反映させて社員参画の会社にしたいと真面目に考える経営者ほど、
社員からの意見やアイデアを求める傾向がみられるようです。
意見を求められた社員の立場からの発言には、
・オブラートに包んで会社への不満が込められていることもある
・その場の思い付きで、深く考えていないこともたくさん出てくる
・聞きかじりの裏付けのない成功事例の情報に基づく意見もある
・本気でそう思っているわけではない想いの乗っていない意見も少なくない
意見を聴いた経営者は、
・真面目に受け取る
・多少問題があると感じても、社員から出始めた動きを消すのは良くないと考えて、真面目にカネを使い始める
・しかし、取り組みが形になるころには、言い出した社員は、その取り組みが自分の意見だったことすら忘れている
・経営者には、社員の無責任さを感じて、不信感が芽生えていく
・やがて、社員の意見を聴くことを諦めた経営者になっていく
残念ながら、こうしたことはよく起こっています。
この問題を、アイデアを形にするプロセスの面から考えると
あるテーマに関してアイデア出しをする段階では、思い付きレベルもモノも含めて幅広く出し合うことが肝になります。上記のような形で社員に意見を求めた場合に出てくる意見はこの段階(「発散」)のものです。
真面目な経営者ほど、この段階で真剣に受け止めて形にすることを考え始めますが、この段階の意見は、アイデアレベルで充分に精査されたものではありません。ここで着手に踏み込んでも上手くいかないことが多いでしょう。
幅広い意見が十分に出たら、次の段階として、それらを整理・統合しながらかみ合わせていきます。この段階を「収束」と呼んでいます。
詳細は割愛しますが、こうした手順を踏んでアイデアを事業に堪えうる企画にして制度を上げていくプロセスを踏むことが大切なのですが、そうした過程を飛ばして実行しまうので、残念な結果になってしまうことが起こるように思います。
また、経営者としてのありかたという面からみると
・「経営に関する」ことは、経営者の責任であって、社員の発言に責任はありません
・そのアイデアを採用するかどうかの判断をしたのは経営者自身です
・経営に関しては新規事業も人事も、経営者が自分の信念と責任を持って決めて行く覚悟が大切です
・経営者の中に迷いや焦りが生じることはよくあることですが、社員に意見を求めるときは、意見を求める自らの内面の動機としっかりと向き合う内省的な姿勢が試されます。
そのテーマに向き合うためのヒントやアイデアを得たいのか、
その解決策や判断を求めているのか、
もし後者だとしたら、経営者としての責任を放棄していることになるのかもしれません。
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コロナ禍の厳しい環境の中で、経営上の大きな判断をしなければならない局面に立たされている経営者も少なくないことと思います。
どうしたらいいのかわからない時ほど、会社の原点の仕事に専念しながら、社会の動向、社内の動向をよく観察した方がよさそうです。
前進することばかりが、望ましいとは限りません。
焦りや不安、恐れが背景に潜む決断は、望ましい結果をもたらすことはありません。
優秀な経営者は、大局を見て、待機も撤退もできる人です。
(文責・村岡康裕)
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